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ビタミンB1

発見の時期

ポーランドのフンクは、1911年に米ぬかから分離した脚気予防因子を「ビタミン」と名づけたのですが、この脚気予防因子を純粋な化学物質の結晶として分離したのは、オランダのヤンセンで、1926年のことです。翌年には、ビタミンB1として名前が決まりました。
アメリカのR・R・ウイリアムスが1935年にビタミンB1の化学構造を解明して「チアミン」と命名しました。

化学名

ビタミンB1の化学名はチアミンです。体内では活性型のチアミンピロリン酸(TPP)として作用します。フルスルチアミン(TTFD)、ベンフォチアミン(BTMP)など数多くのビタミンB1誘導体が合成され、ビタミン剤やサプリメントとして販売されています。

注目される薬理作用

アルツハイマー型認知症の治療にビタミン誘導体のフルスルチアミン(TTFD)の大量投与で認知症状の改善が見られたという報告があります。

主な生理作用

 生命活動は分子レベルで見ると、化学反応の連続です。この化学反応はさまざまな酵素によって助けられています。酵素は、アミノ酸だけからなる単純たんぱく質(アポ酵素)に補酵素が結合して、初めて酵素としてその作用を発揮しますが、ビタミンB1、B2、B6、ニコチン酸、パントテン酸、などのビタミンB群の多くがその補酵素として働きを行います。

 糖質の分解(解糖といいます。)に重要な働きを行ういくつかの酵素は活性型B1のチアミンピロリン酸(TPP)がなければ働けません。細胞が糖質をエネルギーとして利用するために特に欠かせない補酵素といえます。

またビタミンB1は神経とも関係の深いビタミンで、中枢神経や末梢神経の働きを正常に保つ役割もしています。

一日の所要量は?

摂取エネルギー1100kcalにつき0.4㎎です。成人男子で0.8~1.0㎎、女性で0.7~0.9㎎とされています。

ビタミンB1の1日所要量をとるには
 豚肉ロース肉ソテー1枚(116g)、ブタヒレ肉一口かつ4枚(75g)、牛サーロイン肉ステーキ12枚(1429g)、うなぎかば焼き1.5人分(133g)、白米ご飯約20杯(3333g)、そば約13玉(2000g)、胚芽米ご飯茶碗約6杯(1000g)、ごま1と1/2カップ(105g)、など

 意外と食品に含まれている量は少ないことがわかりますよね。バランスのよい食事を心がけないと、ビタミンB1不足になっているというケースが、この食品の含有量でわかってもらえると思います。日本人にビタミンB1不足が多いのもある意味納得かもしれません。不規則な食生活でビタミンB1不足を感じたならば、サプリメントでしっかり補給しておくのも大切です。

過剰症は?

ビタミンB1の過剰症は、報告されていません。1日所要量の100倍摂取しても安全といわれています。

欠乏症は?

 典型的なB1欠乏症は、末梢神経に異常が出る脚気(多発性神経炎)と中枢神経に異常が出るウェルニッケ脳症の二つがあります。
脚気は戦後の栄養状態の向上に伴い、わが国では心配がなくなったといわれていましたが、1970年代の調査で、あるタイプの若者に脚気が多発してることが報告されたことがありました。それは激しいスポーツやアルコールの多量摂取でB1の需要消費が高まっているにもかかわらず、清涼飲料水やインスタント食品から糖質を過剰に摂取し、B1を含む動物性食品が不足したために脚気の症状を呈したものでした。
脚気の症状は多発性神経炎のために下肢の神経や筋肉の萎縮が起こり、つまずいたり転びやすくなります。また、運動麻痺のために歩行困難になったりもします。循環器系の症状は、脈拍の増加、低血圧、息切れ、下肢や顔のむくみ、また食欲不振や、悪心などの消化器症状も現れます。重症になると、脳障害が起こる前に心不全を起こして死亡することもあります。

ウェルニッケ脳症は眼球の運動麻痺、意識障害などを特徴としますが、そのベースに慢性アルコール中毒症があると、記憶障害(健忘)、時間や空間の見当識(今日は何月何日や今の時間など)障害、作話(現実の話ではなく作り話)の3徴候からなるコルサコフ症候群という一種の精神病を発祥することもあります。
B1欠乏症は主にアジアでは脚気として、先進国などではウェルニッケ脳症として現れます。最近の傾向としてわが国ではアルコール中毒者にウェルニッケ脳症が発見されるケースが増えているといわれています。

B1を多く含む食品は?

植物性食品では穀類やゴマ、ピーナッツなどの種子類に多く、動物性食品では豚肉に多いのが特徴です。ご飯は日本人の主要なB1摂取源ですが、玄米のB1含有量を100とした場合、胚芽の部分を残して精米した胚芽米は63、7分づき米は50、精白米は19に過ぎません。

脂肪(肉)よりも糖質(穀物)からのエネルギー摂取比率が高い伝統的なわが国食生活では、糖質の代謝に働くビタミンB1の需要が高まります。昔の日本人は玄米や麦、粟、ひえなどの雑穀を食べ、糖質と同時にビタミンB1を補っていましたが、精白米を食べるようになった明治以降はビタミンB1を捨てて食べているようなものです。

このようにビタミンB1を手軽に摂取できる雑穀ですが、白いご飯になれた現代人にとって、なかなか食にする機会さえありませんでしたが、最近は健康ブームからでしょうか、いくつかのメーカーから手軽にご飯に混ぜて炊けるような雑穀が販売されていますので、健康のためには摂取をお勧めします。

このようにビタミンB1は日本人にとって最も不足しやすいビタミンで、油断すれば現在でもビタミンB1欠乏症を招きかねません。明らかな欠乏症ではなくても、血中ビタミン濃度が低く、疲労感などの悩む「潜在的ビタミン欠乏症」は、B1不足に多くみられるといわれています。

現代人は偏った食生活、過剰なダイエットなどこの潜在的ビタミン欠乏症になる可能性が十分あります。例えば、ビタミンB1の体内貯蔵量が減少すれば、細胞内での解糖が不完全になり、エネルギーを十分得ることができなくなるので、体のだるさや、疲労感、動悸、息切れ、食欲不振などの症状が現れるようになります。このような症状を感じたならば、一度食生活を点検してみて、ビタミンB1不足が考えられないかチェックしてみましょう。

         

ビタミン類

ビタミンとは人の体で作り出すことができない物質で、健康の維持には欠かすことのできない微量栄養素です。ビタミンは、体内のさまざまな代謝にかかわり、生体の機能を正常に保つために重要な栄養素です。
ビタミンは、ビタミンB群やCなどの水溶性ビタミンと、ビタミンA、D、K、Eの脂溶性ビタミンに分けられます。
ビタミンの働きとして従来より、代謝調整作用や補酵素作用が知られていますが、各種がんの発生予防や老化を防ぐ機能など最近注目の機能も研究により明らかにされてきています。健康を維持増進してゆくためにビタミンの作用を知って、生活に積極的に取り入れてゆくようにしましょう。

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