ビオチン
| 発見の歴史 |
1927年ドイツのボアスがネズミに大量の卵白を食べさせると皮膚炎や脱毛などの症状が起こることを観察し、この症状を防ぐ因子を動物の肝臓中に発見しました。この皮膚炎予防因子をP.ジェルジーは1931年にビタミンHと命名しました。
一方、酵母の成長因子として発見された因子はビオスと呼ばれていました。このビオスからビオスaとビオスbという二つの因子が分離され、ビオスbは1935年にドイツのケーグルによって「ビオチン」と命名されました。(ビオスaはパントテン酸です。)のちにこのビオチンはビタミンHと同一の物質であることが1940年に証明され、ビタミンHは後に欠番となったのです。
| 化学名 |
ビオチンが化学名です。
| 注目される薬理作用は? |
ビオチンによるアトピー性皮膚炎や糖尿病の改善が注目されています。これらの疾患を持っている患者さんは毛中のビオチン濃度が低く、ビオチンの補給で実際に改善効果が見られます。皮膚炎を起こすヒスタミンの基であるヒスチジンに効き目があったり、糖代謝が改善されるためと考えられますが詳しいことはまだわかっていません。
| 主な生理作用は? |
ブドウ糖が筋肉内でエネルギーを発生させる際に乳酸が生じますが、この乳酸は肝臓でピルビン酸になり、さらにオキサロさ酢酸を経てブドウ糖に戻ります。これを糖新生と呼びますがこの過程で働く酵素にカルボキシラーゼがあります。ビオチンはこのカルボキシラーゼの補酵素として働いています。
また、脂肪酸やアミノ酸の代謝、またDNAの成分となる核酸を作る際にもビオチンを含む酵素が働き、細胞の増殖を促進します。
| 一日の所要量は? |
ビオチンは穀類や肉など多くの食品に含まれる上、腸内で細菌が合成するため通常の状態では欠乏症を起こすことはないといわれています。そのため、所要量についてははっきりした基準は定められていませんが「日本人の食事摂取基準2005年版」では、目安量として成人男女ともに1日45μg、妊婦はプラス2μgと定められています。
| 過剰症は? |
報告されていません。「日本人の食事摂取基準2005年版」の目安量といわれる45μgの100倍摂っても安全といわれています。
| 欠乏症は? |
通常の食生活では欠乏症の発生はありませんが、発見の歴史の中で卵白を大量に食べたネズミが皮膚炎を起こしたのは、生の卵白に含まれるアビシンというたんぱく質が、胃の中でビオチンと結合して高分子の物質になり、腸管からの吸収を妨げて症状を起こさせたものです。
人間でも、毎日10個もの生卵を食べ続けたような場合には、アビシンの吸収阻害作用によってビオチン欠乏が起こり、皮膚炎、結膜炎、白髪化(脱色)、脱毛、筋肉痛、疲労感、うつ状態などの症状が発生します。
| ビオチンを多く含む食品は? |
多くの食品に含まれている物質です。吸収阻害を起こす卵にも約11μgのビオチンが含まれています。吸収阻害物質のアビシンは、卵を加熱することで変性しビオチンと結合できなくなります。ビオチンの摂取効率を考えると生卵のまま食べるより、目玉焼きなどの熱を加えたほうがいいですが、多くの食品に含まれている物質なので、神経質になる必要はまったくないといえます。

