ニコチン酸(ナイアシン)
| 発見の歴史 |
他のビタミンの発見とは異なり、ニコチン酸は1867年にすでに純粋な化学物質として分離されていました。米ぬかから脚気予防因子としてビタミンB1を発見したフンクは、1914年、同じ米ぬかからニコチン酸を分離しましたが、これがペラグラ(ニコチン酸欠乏症)予防因子であることには気づきませんでした。
1937年、アメリカのエルビエムは動物の肝臓からペラグラ予防因子を分離し、ニコチン酸であることを証明しました。
| 化学名 |
ニコチン酸が化学名で、その誘導体をニコチン酸アミドといます。これらを総称してナイアシンという呼称もよく使用されます。
| 注目される薬理作用 |
ニコチン酸は脂肪の代謝を改善します。1日1500㎎のニコチン酸アミドの服用で、中性脂肪やコレステロールの低減作用が認められています。コレステロールは、血液中ではアポタンパクBと呼ばれるたんぱく質にくるまれた形で運ばれますが、ニコチン酸アミドの服用によって、アポタンパクBが減ることが知られています。このため、高脂血症や動脈硬化の改善のためにビタミンEとニコチン酸アミドの合剤「ニコチン酸トコフェロール」が使用されます。
| 主な生理作用 |
体内のニコチン酸はニコチン・アミド・ジヌクレオチド(NDA)とニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド酸(NADP)という活性体の形で存在し、エネルギー産生に働く酵素を補酵素として助けています。このNDAとNADPを補酵素として用いる生体内の酵素は、約450種類余りあり、全酵素の2割もあります。まさにナイアシンは生体内で重要な位置を占めているビタミンといえます。
| 一日の所要量は? |
ニコチン酸は必須アミノ酸であるトリプトファンから肝臓からも作られます。その変換率は60対1で、ニコチン酸の摂取が少なくてもトリプトファンの摂取が多かれば問題はないので、ニコチン酸の1日所要量は、トリプトファン60㎎を1㎎に換算した「ニコチン酸当量」として定められています。
一日に摂取が必要なニコチン酸当量は、摂取エネルギー1000kcalにつき、6.6ミリグラムで20代男性で約17㎎、女性で13mgの計算になります。
| 過剰症は? |
一般的に報告されていませんが、大量摂取は血管の平滑筋を交感神経を経由せずに弛緩させて血管を広げる作用があります。このため一時的に顔が紅潮したり、上半身がほてったりかゆくなったりするフラッシング症状が起きます。さらに、神経過敏、頭痛、下痢なども見られます。ニコチン酸アミドのラットへの過剰投与の実験では、成長が著しく遅れる現象が出ています。
| 欠乏症は? |
典型的なニコチン酸欠乏はペラグラです。ペラグラの主症状は、皮膚炎に下痢などの消化器症状を伴い、欠乏が進むと中枢神経が傷害されて認知症をきたします。
| ニコチン酸を多く含む食品は? |
魚、肉、豆類などに多く含まれています。これらは同時にたんぱく質を豊富に含み、トリプトファン含有量が多いので、ニコチン酸当量は高値になります。かつおの刺身やたたきなら4~5切れで1日所要量をカバーできます。たんぱく質はトリプトファンを1%程度含んでいるので、たんぱく質を1日100g摂ればトリプトファンを1g(ニコチン酸当量で16.7㎎)摂取することになり、ニコチン酸の摂取を気にしなくても不足の心配はないといわれています。
ただし、大酒飲みの人は肝臓でアルコールを分解するときに、アルコール脱水素酵素の補酵素としてNADが働いており、大酒を飲む人はそれだけNADが必要となります。肝臓が弱ければトリプトファンからNADの合成が著しく減少し、欠乏症が起こる場合があります。飲酒機会が多く肝機能が弱っている人は、飲酒前にビタミン剤などでナイアシンを補給しておくことをお勧めします。

